【連載】静かに修正不能になる組織|第4回

― 判断を組織全体に届けるために

判断が届かない組織で起きている、静かな撤退

組織が修正不能に向かうとき、

最初に起きるのは混乱でも対立でもない。

静かな撤退である。

怒鳴る人はいない。

反乱も起きない。

辞表が一斉に出るわけでもない。

ただ、

少しずつ、確実に、

人が「関与しなくなっていく」。


壊れる前に、人は黙る

多くの人が誤解しているが、

優秀な人ほど、簡単には壊れない。

代わりに、こう振る舞う。

・説明しなくなる

・提案しなくなる

・違和感を言語化しなくなる

これは拗ねでも諦めでもない。

合理的な適応である。

判断が届かない。

考えても変わらない。

責任だけが残る。

そうした環境で、

思考と関与を続けるのは、

コストが高すぎる。


「何も問題が起きていない」状態が完成する

静かな撤退が進むと、

組織は一見、安定する。

・会議は荒れない

・対立は表に出ない

・現場は淡々と回る

だがこの状態は、

健全さではなく、摩耗の結果だ。

本来、組織には

・違和感

・摩擦

・問い

が必要だ。

それらが消えたとき、

組織は「問題が起きない状態」を獲得する。

同時に、

修正する力を失っている。


静かな撤退は、忠誠の形をしている

撤退という言葉は、

ネガティブに聞こえるかもしれない。

だが多くの場合、

撤退している人たちは、

最後まで真面目だ。

・指示は守る

・成果は最低限出す

・組織を批判しない

外から見れば、

従順で、協力的で、問題のない人材だ。

しかし内側では、

判断も感情も、

組織から切り離されている。

これは裏切りではない。

忠誠の最終形である。


撤退は、個人の問題ではない

重要なのは、

静かな撤退は個人の弱さではないという点だ。

・勇気がないから

・覚悟が足りないから

・当事者意識が低いから

そうした説明は、

現実を見誤らせる。

撤退は、

判断が届かない構造への適応として起きる。

誰かが怠けたのではない。

構造が、そう振る舞うことを合理的にしたのだ。


こうして組織は「音を失う」

撤退が進んだ組織では、

次第に、音が消えていく。

・異論が出ない

・問いが生まれない

・想定外が語られない

残るのは、

過去の前提をなぞる判断と、

形式だけの意思決定だ。

この段階になると、

修正は難しい。

なぜなら、

修正案を出す人が、もういないからである。


壊れていないのに、戻れない

外から見ると、

その組織はまだ壊れていない。

だが内側では、

すでに多くの人が距離を取っている。

・辞めてはいない

・反抗もしていない

・ただ、深く関与していない

この状態こそが、

「静かに修正不能になる」瞬間だ。


次回に向けて

ここまで見てきたように、

組織が修正不能になるプロセスは、

・判断が届かなくなり

・判断する意味が失われ

・人が静かに撤退する

という流れで進行する。

では、どうすればいいのか。

次回、最終回では、

判断を組織全体に届けるとは、どういうことか

を正面から扱う。

説得や精神論ではなく、

構造として、どう設計すればいいのか。

修正可能性を組織に残すために、

何が必要なのか。

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