― VUCA時代の実行と学習のマネジメント
3割で前に進む組織だけが、なぜ学習できるのか
第1回では、VUCAの時代において
「やらない」という選択が中立ではなく、
明確なマイナスであるという話をした。
では、やれば何でもいいのか。
闇雲に動けば、学習できるのか。
答えは、当然NOである。
重要なのは、
どれくらい当たるかではなく、
どのように外れるかだ。
なぜ「3割」でいいのか
成功率3割と聞くと、
低いと感じる人も多いだろう。
だが、VUCA環境では、
そもそも事前に当たりを引ける確率が高くない。
・前提が揺らぐ
・環境が変わる
・想定外が常態化する
この中で、
7割当てにいく戦略は、
ほぼ必然的に「動かない」戦略になる。
3割という数字は、
甘さではない。
「外れることを前提に、前に進む」
という覚悟の表明である。
学習は「成功」からではなく「ズレ」から生まれる
組織が学習するのは、
成功したときではない。
・なぜ想定と違ったのか
・どこで読み違えたのか
・何が変数だったのか
こうした問いは、
ズレが生じたときにしか立ち上がらない。
成功が続くと、
人は前提を疑わなくなる。
一方、3割の成功率を前提にすると、
ズレは必ず起きる。
そして、ズレが起きるたびに、
組織は考えることを強いられる。
高い成功率を目指すほど、学習は遅くなる
皮肉なことに、
成功率を高く設定すればするほど、
組織の学習は遅くなる。
理由は明確だ。
・検討が長くなる
・承認が増える
・実行の単位が大きくなる
結果として、
「間違えないために、動かない」
という選択が、
最も合理的になる。
この状態では、
学習は理論上のものになり、
現実との接続を失う。
3割を前提にすると、行動が変わる
成功率3割を前提にすると、
組織の振る舞いは変わる。
・小さく試す
・早く出す
・戻せる形にする
実行は、
勝負ではなく、実験になる。
重要なのは、
この転換が、
心理論ではなく設計論だという点だ。
学習できる組織は「正解」を急がない
学習できる組織は、
正解を急がない。
その代わりに、
・仮説を明確にし
・試した結果を言語化し
・次の判断に反映する
この循環を回す。
3割で前に進むとは、
「雑にやる」ことではない。
仮説 → 実行 → 学習 → 修正
を、止めないという意思決定である。
3割を許容できない組織は、動けなくなる
逆に言えば、
3割を許容できない組織は、
動けなくなる。
・失敗を恐れる
・評価が曖昧
・責任が重い
こうした環境では、
成功率を上げるために、
実行が先送りされる。
やがて、
「確実でないことは、やらない」
という暗黙のルールができる。
この瞬間、
組織は学習を放棄している。
第2回のまとめ
VUCAの時代において、
- 高い成功率は幻想である
- 学習はズレからしか生まれない
- 3割を前提にした組織だけが、動き続けられる
3割で前に進むというのは、
楽観でも無責任でもない。
不確実性を前提にした、最も現実的な戦略である。
次回は、
なぜ多くの組織で
「実行しないほうが合理的になる構造」
が生まれてしまうのかを掘り下げる。
個人の問題ではなく、
組織の設計として、何が起きているのか。

