【連載】3割で前に進む組織論|第5回(最終回)

― VUCA時代の実行と学習のマネジメント

学習が回り続ける組織を、どう維持するか

ここまで、

VUCAの時代において

  • 「やらない」はマイナスであること
  • 3割で前に進むことが学習を生むこと
  • 実行しないほうが合理的になる構造
  • 実行を生むマネージャーの役割

を見てきた。

では最後に問いたい。

どうすれば、これらを一時的な取り組みで終わらせず、

学習が回り続ける組織として維持できるのか。

最大の敵は「うまくいっている感じ」

学習が止まる最大の理由は、失敗ではない。

「うまくいっている感じ」である。

・大きな問題は起きていない

・数値は安定している

・現場は回っている

この状態になると、

人は前提を疑わなくなる。

だがVUCA環境では、

「問題が起きていない」ことと

「正しい方向に進んでいる」ことは、まったく別だ。

学習が回り続ける組織は、

安定しているときほど、前提を点検する。

学習は「イベント」ではなく「運動」である

学習というと、

  • 振り返り会
  • レビュー
  • 研修

といったイベントを思い浮かべがちだ。

だが、それらは補助輪にすぎない。

本当に重要なのは、

判断 → 実行 → 学習 → 修正

が、日常業務の中で回っているかどうかだ。

学習を特別な時間に閉じ込めた瞬間、

それは現場から切り離される。

維持に必要なのは「問い」である

学習が回り続ける組織には、

共通して残っているものがある。

それは、問いだ。

・なぜ、今こうしているのか

・前提は変わっていないか

・次は、何を試すか

これらの問いが、

定期的に、しかし自然に投げかけられている。

重要なのは、

問いが誰かの勇気に依存していないことだ。

問いを構造にする

学習を維持するためには、

問いを「構造」に落とす必要がある。

たとえば、

・判断には必ず仮説を添える

・実行後は、成果より学びを先に共有する

・修正は失敗ではなく、当然の行為とする

こうした前提が、

暗黙ではなく明示されているかどうか。

問いが構造になると、

人が変わっても、学習は止まらない。

マネージャーが最後に手放すべきもの

ここで、

マネージャー自身についても触れておきたい。

学習が回る組織を維持するために、

マネージャーが最後に手放すべきものがある。

それは、

「自分が正しい判断をしなければならない」という責任感だ。

VUCAの時代に、

一人のマネージャーが正解を持ち続けることは不可能である。

代わりに引き受けるべき責任は、こちらだ。

正解がなくても、

学習が止まらない状態をつくること。

3割で前に進むという文化

3割で前に進む組織とは、

失敗を称賛する組織ではない。

また、

スピードだけを重視する組織でもない。

それは、

・不確実性を前提にし

・外れることを織り込み

・学び続けることを選び続ける

極めて現実的な組織である。

最終回のまとめ

VUCAの時代において、

  • 正解を待つ組織は、止まる
  • 成功率を求める組織は、学ばない
  • 3割で前に進む組織だけが、前提を更新できる

学習が回り続ける組織とは、

特別な才能を持つ人がいる組織ではない。

問いと修正が、構造として残っている組織だ。

おわりに

この連載で一貫して伝えたかったことは、ひとつだけである。

VUCAの時代に、

組織を前に進めるのは正解ではない。

3割でも実行し、学び続ける構造である。

やらないことは、もう安全ではない。

止まらないことこそが、

最大のリスクヘッジになっている。

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