【連載】他者の時間を扱うということ|第4回

「情報を渡した」と「すんなり届いた」は別の話

仕事で、こんな経験はないでしょうか。

  • 資料は共有した
  • 説明もした
  • それなのに、なぜか話が進まない

「ちゃんと出したはずなんだけどな」

そう感じるとき、問題は情報量や努力不足ではありません。

多くの場合、起きているのは

情報は渡っているが、仕事は渡っていない

という状態です。

情報を渡すことと、仕事を渡すこと

情報を渡すこと自体は、難しくありません。

  • ファイルを送る
  • チャットに貼る
  • 口頭で説明する

ここまでやると、「伝えた」という感覚になります。

しかし、受け手の側から見ると、話はここから始まります。

  • これは何のための情報か
  • どこが重要なのか
  • 何を判断すればいいのか

これらを整理するために、

受け手は自分の時間と思考力を使います。

「すんなり届くパス」を出しているか

他者理解がある人は、

情報をそのまま渡すことをしません。

代わりに、次の点を意識します。

  • 目的が最初に分かる
  • 結論や判断点が明確
  • 次のアクションが一文で分かる

相手が

受け取った瞬間に、何をすればいいか分かる

状態まで整えてから渡す。

これが「すんなり届くパス」です。

これは親切心ではなく、

他者の時間を無駄にしないための設計です。

「読めば分かる」は、誰の時間を使っているか

説明する側の「資料を読めば分かります」という言葉。

この言葉自体が悪いわけではありません。

ここで問題にしているのは、

資料を読むという行為そのものではなく、

どこまで考える責任を誰が引き受けているかという点です。

説明する側がこの言葉を使うとき、

無意識のうちに次の判断を相手に委ねていることがあります。

  • どこが重要なのか
  • 何を判断すべきなのか
  • 次にどう動けばいいのか

本来であれば説明する側が整理できたはずの思考を、

相手の時間と集中力に委ねてしまっている状態です。

資料を読むための時間を使っているのは、あくまで受け手側です。

その時間を前提にする以上、

説明する側には「どこをどう読めばよいか」を示す責任があります。

ここで言っている「読めば分かる」とは、

説明を省くことでも、

資料を読み上げることの是非でもありません。

思考の整理をどこまで自分が引き受けているか、

その姿勢を問う言葉です。

話が早い人のアウトプットに共通すること

仕事が進む人のアウトプットには、共通点があります。

  • 何の話かが冒頭で分かる
  • 選択肢が整理されている
  • 決めてほしい点が明確

その結果、

  • 確認が少ない
  • 手戻りが少ない
  • 会話が短く終わる

つまり、

相手に考えさせない人ほど、

結果的に全体の時間を節約しているのです。

受信完了までが、自分の仕事

「送ったから終わり」

「説明したから終わり」

そこから一歩進んで、

相手が動けたところまでが、自分の仕事

と考えると、

アウトプットの形は自然と変わります。

  • どこで迷いそうか
  • 何を補足すればよいか
  • どこまで書けば十分か

こうした視点は、

スキルではなく姿勢の問題です。

他者の時間を尊重するということ

ここまでの話は、

資料作成テクニックの話ではありません。

本質は、

他者の時間と集中力を、どう扱っているか

という点にあります。

すんなり届くパスを出すことは、

「分かりやすくする努力」ではなく、

他者の時間を軽く扱っていないという意思表示でもあります。

次回予告

次回はいよいよ最終回です。

「相談しながら決める」という言葉の裏側にある、

要望整理・要件定義の責任について掘り下げます。

相談は協働ですが、

考えることまで手放してよいわけではありません。

この連載で見てきた「他者の時間を扱う」という視点が、

最も分かりやすく表れるパートになります。

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