「情報を渡した」と「すんなり届いた」は別の話
仕事で、こんな経験はないでしょうか。
- 資料は共有した
- 説明もした
- それなのに、なぜか話が進まない
「ちゃんと出したはずなんだけどな」
そう感じるとき、問題は情報量や努力不足ではありません。
多くの場合、起きているのは
情報は渡っているが、仕事は渡っていない
という状態です。
情報を渡すことと、仕事を渡すこと
情報を渡すこと自体は、難しくありません。
- ファイルを送る
- チャットに貼る
- 口頭で説明する
ここまでやると、「伝えた」という感覚になります。
しかし、受け手の側から見ると、話はここから始まります。
- これは何のための情報か
- どこが重要なのか
- 何を判断すればいいのか
これらを整理するために、
受け手は自分の時間と思考力を使います。
「すんなり届くパス」を出しているか
他者理解がある人は、
情報をそのまま渡すことをしません。
代わりに、次の点を意識します。
- 目的が最初に分かる
- 結論や判断点が明確
- 次のアクションが一文で分かる
相手が
受け取った瞬間に、何をすればいいか分かる
状態まで整えてから渡す。
これが「すんなり届くパス」です。
これは親切心ではなく、
他者の時間を無駄にしないための設計です。
「読めば分かる」は、誰の時間を使っているか
説明する側の「資料を読めば分かります」という言葉。
この言葉自体が悪いわけではありません。
ここで問題にしているのは、
資料を読むという行為そのものではなく、
どこまで考える責任を誰が引き受けているかという点です。
説明する側がこの言葉を使うとき、
無意識のうちに次の判断を相手に委ねていることがあります。
- どこが重要なのか
- 何を判断すべきなのか
- 次にどう動けばいいのか
本来であれば説明する側が整理できたはずの思考を、
相手の時間と集中力に委ねてしまっている状態です。
資料を読むための時間を使っているのは、あくまで受け手側です。
その時間を前提にする以上、
説明する側には「どこをどう読めばよいか」を示す責任があります。
ここで言っている「読めば分かる」とは、
説明を省くことでも、
資料を読み上げることの是非でもありません。
思考の整理をどこまで自分が引き受けているか、
その姿勢を問う言葉です。
話が早い人のアウトプットに共通すること
仕事が進む人のアウトプットには、共通点があります。
- 何の話かが冒頭で分かる
- 選択肢が整理されている
- 決めてほしい点が明確
その結果、
- 確認が少ない
- 手戻りが少ない
- 会話が短く終わる
つまり、
相手に考えさせない人ほど、
結果的に全体の時間を節約しているのです。
受信完了までが、自分の仕事
「送ったから終わり」
「説明したから終わり」
そこから一歩進んで、
相手が動けたところまでが、自分の仕事
と考えると、
アウトプットの形は自然と変わります。
- どこで迷いそうか
- 何を補足すればよいか
- どこまで書けば十分か
こうした視点は、
スキルではなく姿勢の問題です。
他者の時間を尊重するということ
ここまでの話は、
資料作成テクニックの話ではありません。
本質は、
他者の時間と集中力を、どう扱っているか
という点にあります。
すんなり届くパスを出すことは、
「分かりやすくする努力」ではなく、
他者の時間を軽く扱っていないという意思表示でもあります。
次回予告
次回はいよいよ最終回です。
「相談しながら決める」という言葉の裏側にある、
要望整理・要件定義の責任について掘り下げます。
相談は協働ですが、
考えることまで手放してよいわけではありません。
この連載で見てきた「他者の時間を扱う」という視点が、
最も分かりやすく表れるパートになります。

