― 時間はあるのに、なぜ動けないのか
前回は、
「忙しい」という言葉が、
時間の不足を表すものではなく、
実行を先送りするための最強の言語であることを見てきた。
では、もう一歩踏み込もう。
実際のところ、多くの人は本当に忙しい。
スケジュールは埋まり、やることは山積みだ。
それでも、なぜ
重要だと分かっていることほど、手をつけられないのか。
問題は「時間」ではない
この問いに対して、
最も多い誤解はこれだ。
時間がないから、できない。
だが現実を見ると、
時間が突然できたからといって、
人は自動的に動き出すわけではない。
休暇明けでも、
締切直前でも、
「重要だが重いタスク」は後回しにされがちだ。
つまり問題は、
時間の量ではない。
実行が消耗するのは「認知資源」である
実行を伴う行動は、
単に手を動かすことではない。
そこには必ず、
・判断
・不確実性
・失敗の可能性
・評価に晒される感覚
が含まれる。
これらが消費するのは、
時間ではなく、
認知資源(思考力・精神的エネルギー)だ。
忙しい状態とは、
この認知資源が
細切れに消費され続けている状態でもある。
忙しさは、思考を浅くする
メール、会議、調整、連絡。
これらは一つひとつは軽いが、
確実に認知資源を削る。
結果として、
・深く考える余力がなくなる
・決断を伴う行動を避けたくなる
・判断を先送りしたくなる
この状態で
「重要なことに取り組め」と言われても、
人は自然にブレーキを踏む。
実行は「自己評価」を賭ける行為である
もう一つ重要な点がある。
実行とは、
結果だけでなく
自分自身の評価を賭ける行為だ。
・うまくできるだろうか
・価値のある成果になるだろうか
・中途半端だと思われないか
こうした問いは、
無意識のうちに
自尊心を消耗させる。
その不安に対して、
「忙しい」という言葉は、
最短距離で退避できる出口になる。
忙しい状態は「安全」である
忙しい状態にいる限り、
・判断を下さなくていい
・失敗の可能性を引き受けなくていい
・評価を真正面から受けなくていい
忙しさは、
実行に伴う心理的リスクを遮断するシェルター
として機能する。
だから人は、
無意識のうちに
忙しさの中に留まり続ける。
なぜ「重要なこと」ほど後回しになるのか
重要なことほど、
・正解が分からない
・失敗の影響が大きい
・やり直しが効きにくい
つまり、
認知的にも感情的にも重い。
だから人は、
軽くて終わりが見えるタスクで
一日を埋めてしまう。
結果として、
忙しいのに、前に進んでいない
という感覚が生まれる。
第2回のまとめ
時間があるのに動けない理由は、
- 時間不足ではない
- 能力不足でもない
- 意志の弱さでもない
認知資源と自己評価が消耗しているからだ。
忙しさとは、
実行を止める原因であると同時に、
実行を避けるための合理的な環境でもある。
では、どうすればいいのか。
次回は、
「忙しい人」と「3割で前に進める人」の決定的な違い
に焦点を当てる。
同じ時間、同じ不確実性の中で、
なぜ一部の人だけが前に進めるのか。

