― VUCA時代の実行と学習のマネジメント
VUCA時代に「やらない」はなぜマイナスなのか
不確実性が高い時代だ、とよく言われる。
VUCA――先が読めず、前提が揺れ、正解が短命な環境。
こうした状況では、
「慎重に判断する」
「もう少し情報を集める」
「今は様子を見る」
という姿勢が、一見すると合理的に見える。
だが、結論から言えば、
VUCAの時代において「やらない」という選択は、中立ではない。
それ自体が、明確なマイナスの意思決定である。
待っても、不確実性は減らない
かつては、時間をかけることで状況が整理され、
判断の精度が上がる局面もあった。
しかし今は違う。
・市場は動き続ける
・技術は更新される
・顧客の前提は変わる
待っている間に、
判断の前提そのものが変質していく。
つまり、
「やらないで待つ」=「より良い判断ができるようになる」
という前提が、すでに崩れている。
VUCA環境では、
待つことは判断を洗練させる行為ではない。
判断の機会を失う行為である。
実行しない組織は、学習しない
組織が学ぶのは、
会議や検討の場ではない。
学習が起きるのは、
実行の後である。
・仮説がどこで外れたのか
・想定外は何だったのか
・何がボトルネックだったのか
これらは、
やってみなければ分からない。
実行しない組織は、
間違えないかもしれない。
だが同時に、何も学ばない。
VUCAの時代において、
学習しない組織は、
静かに競争力を失っていく。
「やらない」は現状維持ではない
多くの組織が誤解している。
・やらない=安全
・やらない=今のまま
しかし現実には、
やらない=相対的な後退
である。
自分たちが止まっている間にも、
環境は動いている。
競合は試し、学び、前提を更新している。
何もしないことは、
現状を保つ行為ではない。
差を広げられる行為だ。
それでも「やらない」が選ばれる理由
ここで重要なのは、
実行しないマネージャーを責めないことだ。
多くの場合、
「やらない」という判断は、
個人にとっては合理的である。
・やっても評価されない
・失敗すれば説明責任が増える
・成功しても、次の負荷が増える
この構造の中では、
やらないことが、最もコストの低い選択
になる。
問題は、人ではない。
構造である。
VUCA時代に必要なのは「成功」ではない
VUCAの時代に必要なのは、
成功率の高さではない。
学習速度の速さである。
成功打率は、3割でいい。
残りの7割は、外れて構わない。
重要なのは、
・仮説を立て
・小さく試し
・学びを言語化し
・次に反映する
このサイクルを、止めないことだ。
実行しないことの、見えにくいコスト
実行しない組織が失っているのは、
成果だけではない。
・判断力
・修正力
・挑戦する筋力
これらは、
使わなければ衰える。
やらない時間が長くなるほど、
次に動くハードルは高くなる。
こうして組織は、
動けない状態に適応していく。
第1回のまとめ
VUCAの時代において、
- やらないことは安全ではない
- 待つことで精度は上がらない
- 実行しない組織は学習しない
そして何より、
「やらない」という選択は、
それ自体が明確なマイナスである。
では、どうすればいいのか。
次回は、
「3割で前に進む組織だけが、なぜ学習できるのか」
をテーマに、
実行と学習の関係を、もう一段掘り下げていく。

