【連載】3割で前に進む組織論|第3回

― VUCA時代の実行と学習のマネジメント

実行しないほうが、なぜ合理的になってしまうのか

ここまで、

VUCAの時代において

「やらない」はマイナスであり、

「3割で前に進む」ことが学習を生む、という話をしてきた。

では、なぜ多くの組織では、

それでもなお「実行しない」選択が繰り返されるのか。

答えは単純で、

実行しないほうが合理的になる構造が、

組織の中に組み込まれているからだ。

実行が止まるのは、意志の問題ではない

まず確認しておきたいのは、

実行が止まる原因は

マネージャーの意志の弱さではない、ということだ。

多くの場合、彼らは真面目で、

組織のために最善を尽くそうとしている。

それでも実行が止まるのは、

動いたときの期待値より、動かないときの期待値のほうが高い

構造になっているからである。

「動いた場合」に発生するコスト

実行すると、何が起きるか。

・失敗した場合、説明責任が生じる

・想定外が起きれば、調整業務が増える

・成功しても、次の仕事が増える

つまり、実行には

確実な負荷が伴う。

一方で、実行の成果は不確実だ。

成功するかどうかは分からない。

「動かなかった場合」に発生するコスト

では、動かなかった場合はどうか。

・大きな責任は発生しない

・前例を踏襲していれば、批判されにくい

・状況が変われば、判断を修正できる

つまり、

動かないことには、

明確で即時のコストがほとんどない。

この差が、

実行を止める。

実行が「個人リスク」になる瞬間

実行が合理的でなくなる最大の要因は、

実行が個人リスクとして扱われることだ。

・成功しても組織の成果

・失敗したら個人の責任

この非対称性が存在する限り、

人は慎重になる。

それは保身ではない。

合理的な判断である。

組織が無意識に作る「待つ文化」

こうした構造が続くと、

組織には次第に、暗黙の文化が生まれる。

・まず様子を見る

・前例が出るまで待つ

・誰かが先にやるのを待つ

やがて、

「すぐに動く人は軽率」

「慎重な人が評価される」

という空気が形成される。

この段階で、実行は勇気ではなく、

空気を乱す行為になる。

判断は増えるが、実行は減る

皮肉なことに、

実行しない組織ほど、判断は増える。

・会議が増える

・検討が増える

・資料が増える

だが、それらは

実行を前に進めるためではなく、

実行しないことを正当化するために使われ始める。

判断はある。

だが、行動につながらない。

実行が止まった組織の末路

実行が止まると、

学習も止まる。

学習が止まると、

判断は過去の前提に依存する。

やがて組織は、

「変化に弱いが、理由は説明できない」

状態になる。

これは突然起きるのではない。

合理的な判断の積み重ねとして、静かに進行する。

第3回のまとめ

実行しないほうが合理的になるのは、

  • 実行のコストが個人に集中し
  • 実行しないコストが可視化されず
  • 待つことが評価される構造があるから

これは個人の問題ではない。

組織設計の問題である。

次回は、

この構造を前提にしたうえで、

それでも実行を生むために、マネージャーは何をすべきか

を具体的に考える。

精神論ではなく、

役割として、どんな行動が求められるのか。

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