【連載】AIに相談するということ|第2回

前回は、AIが返してくるものは「答え」ではなく、「答えっぽい何か」ではないか、という話をしました。

AIから何かが返ってきたところで、仕事は終わりません。

その内容を評価し、必要であれば問い直し、最後は自分で判断する必要があります。

では、その一つ前。

そもそも私たちは、AIに何を聞けばよいのでしょうか。

AIへの質問がうまくなればいい?

生成AIの活用というと、「プロンプト」が話題になります。

役割を与える。

目的を明確にする。

条件を具体的に書く。

出力形式を指定する。

もちろん、こうした工夫は有効です。

同じことをAIに依頼する場合でも、伝え方によって返ってくる内容は変わります。

ただ、仕事でAIを使うとき、本当に重要なのは「質問の書き方」なのでしょうか。

私は、その前にあるものの方が重要だと考えています。

何を聞くべきか、自分で分かっているか。

ということです。

「売上が落ちています。どうしたらいいですか?」

例えば、自社の売上が落ちているとします。

そこでAIに、

「売上が落ちています。どうしたらいいですか?」

と聞く。

AIは、おそらく何かを答えてくれます。

新規顧客を開拓しましょう。

既存顧客へのアプローチを強化しましょう。

価格戦略を見直しましょう。

SNSを活用しましょう。

商品やサービスを改善しましょう。

どれも間違いとは言い切れません。

しかし、これで自社の問題が解決するでしょうか。

そもそも、なぜ売上が落ちているのかが分かっていません。

顧客数が減ったのか。

購入頻度が落ちたのか。

単価が下がったのか。

特定の商品だけが落ちているのか。

特定の顧客が離れたのか。

市場そのものが縮小しているのか。

原因によって、次に確認すべきことも、取るべき行動も変わります。

AIへの質問以前に、

自分たちは何が起きていると考えているのか。

が必要になります。

問いの前には、仮説がある

ここで必要になるのが、仮説です。

仮説というと難しく聞こえるかもしれません。

しかし、

「もしかすると、こういうことではないか」

と一度置いてみる。

それだけでも構いません。

例えば、

「新規顧客が減っているのではないか」

「値上げ後に購入頻度が下がったのではないか」

「特定の営業担当者だけ数字が落ちているのではないか」

と考えてみる。

すると、AIへの問いも変わります。

「売上を上げる方法を教えてください」

ではなく、

「売上低下の原因を、新規顧客数、既存顧客の購入頻度、客単価に分解して確認したい。どのようなデータを比較すればよいか」

と聞けるようになります。

AIから得られるものも変わってきます。

重要なのは、文章として上手なプロンプトを書いたことではありません。

問いの前に、自分なりの仮説があることです。

AIは問いも作ってくれる

ここで少しややこしい問題があります。

今のAIは、問いそのものも作ってくれます。

「売上が落ちています。考えられる原因を挙げてください」

と聞けば、原因候補を並べてくれる。

「私が確認すべきことを質問してください」

と頼めば、AIの側から質問してくれる。

仮説すらAIに作ってもらえます。

とても便利です。

では、人間は仮説を持たなくてもよいのでしょうか。

おそらく、そうではありません。

AIが10個の仮説を出したとして、

どれが自社ではありそうなのか。

どれから確認すべきなのか。

そもそも重要な仮説が抜けていないか。

それを考えるのは、やはり人間です。

AIは選択肢を増やしてくれます。

しかし、選択肢が増えることと、問題が分かることは同じではありません。

問いを持たないままAIを使う

仮説を持たずにAIを使い続けると、少し危険な状態になります。

AIに聞く。

回答を読む。

そこから気になったことを、また聞く。

さらに回答が返ってくる。

また聞く。

情報はどんどん増えていきます。

調べている。

考えている。

仕事をしている。

そんな感覚にもなります。

しかし、最初に何を確かめたかったのかが曖昧なままでは、どれだけ情報が増えても判断には近づきません。

これはAIが悪いわけではありません。

自分の中に問いがないからです。

AI時代に必要なのは「質問力」なのか

「AI時代には質問力が重要になる」

という話をよく聞きます。

それ自体は間違っていないと思います。

ただ、「上手な質問文を書く力」と捉えると少し違います。

必要なのは、

何が問題なのか。

何が分かっていて、何が分かっていないのか。

原因として何が考えられるのか。

何を確認すれば、その仮説を確かめられるのか。

そう考える力です。

つまり、AIに対する質問力の前に、

仮説を立てる力が必要になる。

AIへの問いは、その結果として生まれるものなのだと思います。

AIに聞く前に

AIは、問いに対して非常に速く反応してくれます。

だからこそ、すぐに聞きたくなります。

しかし、ときには入力欄に文字を打つ前に、

「自分は、何を知りたいのだろう」

「何が起きていると思っているのだろう」

「それを確かめるには、何が必要なのだろう」

と考えてみる。

その数分が、AIから得られるものを大きく変えるかもしれません。

良いプロンプトを書くことよりも、その前に良い仮説を持つこと。

AIが何でも答えてくれる時代だからこそ、

何を問うのかは、人間の側に残された重要な仕事です。

では、その仮説はどこから生まれるのでしょうか。

何も知らない状態から、私たちは適切な仮説を立てられるのでしょうか。

次回は、

「AI時代に、なぜ基礎知識が必要なのか」

について考えてみたいと思います。

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